“火の鳥”が舞い、“モナリザ”が微笑むオーディオルームは“みんな夢の中”……第九回「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会」レポート

春がやってきました!
……と大きな声で言いたくなるような、暖かく気持ちの良い晴天に恵まれた中、九回目となる「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会」が開催されました。

今回のゲストは、オシリペンペンズより中林キララさん、迎祐輔さんのお二人。
前回、森さんが視聴会後に早速キララさん、迎さんにイベントのことを話してくださっていたので、4月のスケジュールが決まった時点で早速ご依頼し、この度、高槻くんだりまで(汗)来ていただける運びとなりました。

普段からオーディオにはこだわりのあるお二人。オーディオ環境をお伺いしたところ、以下のようなお答えでした。

【キララさん】
アンプ:
(プリメイン)Musical Fidelity A3.2
(パワー)Elekit TU-870(真空管シングル・アンプ/6BM8→PCL86三結へ改造)←現在主にこちらを使用
イコライザアンプ:K&R RIAA EQ type1 Kit+自作電源
CDプレーヤー:Pioneer PD-HL1+TASCAM CD-RW700(DACとして使用/DACチップ換装 その他改造)
ターンテーブル:GEMINI XL-DD50 IV
カートリッジ:DENON DL110
スピーカー:Ortofon Concorde105+TAKET BATPURE(スーパー・ツィーター)

【迎さん】
アンプ:マランツのPM-16
スピーカー:フォステクスの16cmのユニットを1015×240×220mmの密閉の箱に、とり付けたもの
CDプレーヤー:ソニーのDVDプレーヤー
ターンテーブル:ソニーの昔のやつ

迎さんは、B&Wのスピーカーを視聴するためにシマムセンに乗り込んだことがあるという勇気の持ち主でもあります(笑)。

お二人のオーディオ環境をご確認いただいたところで、今回の視聴会でのオーディオシステムの解説から始めましょう。

パワーアンプ:ATM-2
コントロールアンプ:ATC-3
イコライザアンプ:ATE-2005
CDプレーヤー:WADIA581
ターンテーブル:TRANSROTOR Rondino FMD
スピーカー:Apogee Caliper Signature(途中からMSM-1

というわけで、今回はいつもに比べて、最新録音少なめ・オーディオ話多めでお送りいたします。
(使用した音源について、CDは〈C〉、アナログ盤は〈ア〉と表記します)

では一曲目には、早速ですがお二人のバンド・オシリペンペンズの作品・「ミクロで行こう」より“都会”を聴いていただきましょう。

三浦社長(以下“三”)「これは、マイクは何本ぐらいで録音してるの?」

中林キララさん(以下“中”)「ドラムに六本……ぐらいだったかな。で、ギターとボーカルに一本ずつ」

三「さっきまでかけてたレコード(視聴室では、アンプを温めるために、スタート前から「サイド・バイ・サイド2」のレコードをかけていました)と、音の出方が全然違うよね。ドラムの低い方の音……スネアの音なんかが聴こえてこない鳴り方で、シンバルだけがバックグラウンド的に鳴ってるような感じで聴こえたんだけども」

迎祐輔さん(以下“迎”)「そうですね、この時はわざとスネアの中心の皮の音を録らずに“へり”を録って、より音の強弱を拾おうと思ってそうしたんです。結構芯のある音も録れると思ってたんですけど……録れなかったですね、はい(笑)」

三「多分、自分たちで演奏してる時の音と比べて、実際(CDから)出てくる音が“こんな音じゃないんだ”という音になったのかなぁ……と聴きながら想像してたんだけどね」

中「これ、僕らが自分たちで録音したんですけど、結構、“面白い部分”を際立たせる、みたいな作り方をしてて」

迎「(演奏している時の)聴こえた感じとは全然違うものとして作ったので、いわゆる生で聴いた時の“いいなぁ、この音”っていうのは……無いですね。結構、録音ではそういうところは諦めてるところがあって(笑)。
さっき、マイクの本数の事を言われてましたけど、耳二つで聴いてる(生の)ドラムの音は、例えばシンバルと耳との距離とかもあって、オンマイクでシンバルを録ってしまうと、シンバルっていうのは全体で鳴るから、“点”で音を録っても、生で聴いてる音とは全然違うし、プレイと全然違うものになっちゃうから、録音する前に、それはもう仕方がないと言うか、諦めて、また違ったデザインの仕方で考えてマイクを立てたりする場合の方が多いですね」

三「なるほど……僕らは、このデジタルの時代に、“いいもの”を作ってもらいたい。殆どの人がCDなりデジタルのソースで音楽を聴いてるわけだから。だからミュージシャンが、録ったものから出てくる音が(本来の生の音と)随分違うよ、というんじゃなくて、ミュージシャンが自分の音を一番知ってるわけだから、録音する側に対する要求がもっとあっていいんじゃないかなぁ、と思う」

中「僕らも、もっとより細かいニュアンスみたいなのが入れていければいいなぁ、とは常に思ってますね」

迎「昔はそういう録音に挑戦したこともあるんですけど。マイク2本で録って、そこで聴いてる感じがそのままパッケージできたらいいなと思って。で、その時に結構迫力のない音になってしまったんです。それだったら、(オンマイクで録ったものと比べて)商品としてどっちが価値があるか……と思ったら、今の段階では、自分たちも高級なマイクが使えるわけじゃないし、オンマイクで録って、最低限のラインでデザインをし直してから、CDの価値として違った形で考える方がいいかな……と思って今の形を取っているわけです」

三「うん……まあ、音楽の聴き方っていうのは色々あるかと思うんだけど。ものすごく楽器のディテールにこだわるのか、全体の音楽性というかミュージカリティというか、そこにステージがあって、そこで聴いたらこんな感じの音が鳴ってるだろうという空気感があるようなものを求めるのか。
今のデジタルの行ってる方向は、全体のミュージカリティよりも、さっきのシンバルの音じゃないけれど、非常に細かいところを捉えてるけど、演奏全体の音波が伝わってくるようなものが出てこないケースが比較的多い。
多分、僕はレコーディングとマイクのせいだと思うんだけどね。というのは、アナログの音っていうのは、全盛期は1965年までなの。それから以後、1982年にはCDプレーヤーが出てくるんだけど、デジタル録音っていうのは1969年頃からPCM録音っていうのは始まってて、その後アナログ盤でもデジタル録音のものが出始めるんだけど、音はどんどん悪くなっていった。1965年頃までは、マルチマイクじゃなくて、LチャンネルとRチャンネルの2本。歌手が歌うならハンドマイクを使って、劇場のスピーカーを2マイクで捉えて録音してる、っていうのが圧倒的に多いんだけど」

迎「50年代のジャズのレコードとか聴いてみると、どこにマイク立てたのかな、って不思議になることはありますね。太鼓の音とかすごくリアルで」

三「そうそう。人間の耳っていうのは左右しかないんだけど、ステージの楽器の上下感も伝わってくるし、なおかつステージの奥行き感も分かる。そこにステージがあって、オーケストラだったら第一バイオリンから並んで……という深さが出てくるけど、デジタル録音だと、それは出てこない。多分これからはデジタル録音ももっと変わってくると思いますよ。でも、今までのものは圧倒的に悪い」

中「アナログだと、録音も“気合い一発!”みたいなところがありますもんね。僕もよく1960年前後のクラシックのアナログを買うんですけど、気配みたいなものが……勿論ノイズも入ってるんですけどその分空気感とか、すごいものがありますよね。“ぞわっ”と来るような……」

ここで、前回もかけて好評だったオスカーピーターソン「We Get Requests」〈C〉より“You Look Good To Me”。

迎「これは2マイクで録ってるんですか?」

三「いや、これは多分5、6本あると思う。ピアノとベースとドラムと……多分、シンバルに一本ぐらい余分に付いてるんじゃないかな」

迎「シンバルの鮮やかさって、マイクを増やすとどんどん失われていくんですよね」

三「うん、で、それをより細かく録ろうとして、非常に指向性が強いマイクを沢山立てて録ると、全体の音楽感が無くなって、薄っぺらい音になりがちなんだよ」

迎「うーん、でも、ピアノがもっと鮮やかに鳴るんじゃないか、という気がしましたけど(笑)」

中「ベースの弓で擦る音はすごくリアルに出てましたね」

そう、今回使っているスピーカーは、前段でも書いた通り、「Apogee Caliper Signature」という、リボン型と呼ばれる構造のスピーカー。写真では分かりづらいですが、厚さ5センチほどで、中央部分は裏が少し透けて見えています。
いわゆる「能率の悪いスピーカー」として知られていたようです。

三「“このスピーカーを鳴らすのには1kWの出力がいる”ということで、発売当時(80年代)このスピーカーが鳴るアンプは良いアンプだ、ということを言われてたんです。今鳴らしてるこれ(ATM-2)は80Wのアンプで鳴らしてる。とてもボリューム全部は上げ切れないんだけど、真空管ってのが如何にスピーカーに対するドライブ能力があるか、ということを我々は証明するために、このスピーカーを買い、事実、80Wで鳴るんだと。
後ろにあるアンプ(ATM-2001)は片チャンネル180Wかな。それで鳴らすともっと音に余裕が出てくると思う。使うパワーは一緒でも、余力があるのは音になって出てくる。ボリュームを上げた時でも、サチュレーションを起こしたりしないでドライブできるから。
アンプはできるだけ出力がある方が良い、と言うけれど、スピーカーが能率良ければ、8Wでも十分。我々も実際8Wのアンプも作ってますから(ATM-300)」

中「僕も家で使ってる真空管アンプは片チャンネル2Wくらいです」

三「そうそう、2Wでも十分。真空管っていうのは、スピーカーを駆動する力があるんだよ」

トランジスタの80Wのアンプと真空管の80Wのアンプとでは、出てくる音が全然違うんですか?

三「そうだな……大体パワー感にしたら(トランジスタは)1/3ぐらいかな。ということは、80Wの真空管アンプだと、240Wぐらいの能力がある」

中「すごく、ハイの音は綺麗に出てくるんですけど、ピアノの音とか、アタックのところがちょっと抑えめな感じが……」

三「うん、今非常にいい点を言ってると思うんだけど、平面よりも、箱に入れる方が、圧倒的にアタック感が出てくる。このスピーカーは、音が前にばっかり出るんじゃなくて、半分前に来て、半分後ろに逃げちゃってる。スピーカーのボックスに入ると、後ろに逃がさないように前に出させるから、アタック感が出る。だから逆にこういうスピーカーを使ってる人は、オペラとかを聴いてる。オペラだったら部屋全体が演奏舞台になるわけですから、そういう情景を思い浮かべられるように、こういうスピーカーを使ってるわけです」

迎「ホールの鳴りとかがリアルなんですかね」

三「そうそうそう」

ということで、ホール感の味わえるレコードとして、お馴染みハリー・ベラフォンテの「At Carnegie Hall」〈ア〉の登場……が、オリジナル盤か見つからず、仕方なく日本盤をかけることに。曲は“The Marching Saints”。

三「これ、日本でプレスする時に、できるだけノイズを少なくするために(ホールの)音を消してしまった。大体、コンサートホールで聴くと、静かなところから急に音が出てくるということは無くて、ざわめきがあったり咳声が聞こえたりする中で音楽がスタートするわけね。そういう雰囲気が日本のプレス盤からは、オリジナル盤と比べると情けないほど吹っ飛んじゃってる」

中「でも、これぐらいの大音響で聴くといいですね。ホール感がすごく出ますね」

それではそろそろ持ってきていただいたものを聴かせていただきましょう。

まずは迎さんより、ガーシュインの“パリのアメリカ人(An American In Paris)”〈ア〉。

三「録音は76年のようだね。録音いいよこれ」

迎「でも……家で聴くよりも、音がつまりすぎてるというか、しんどい感じがしますね」

中「スピーカーの癖だと思うんですけど、中域のピークが結構ごっちゃに団子みたいになって聴こえる」

迎「(家で聴いてると)もうひとつ抜けのいい感じの印象があったんですけど、無いですね。空間みたいなのが小ぢんまりと感じたのと、あと、ダイナミクスがつきにくいんじゃないかと思いました」

どうも今日の音源とApogeeの相性がよくないようだったので、ここでスピーカーを変更。四回目にも出てきました、“盆栽”ことMSM-1の登場です。もう一度、“パリのアメリカ人”を聴いてみました。

迎「こっちの音の方が好きですね。締まった音で」

シャキッとした音になりましたね。僕もこちらのきらびやかな感じの音の方が好きです。MSM-1はペアで12万円。コストパフォーマンス高いですねぇ。

続いては、キララさんお持ちのベートーベン“交響曲第6番 田園(Sinfonie Nr.6 F-Dur op.68 Pastorale)”〈ア〉。

三「いい録音だね。今度は対象的にCDをかけてみようか」

というわけで、こちらもキララさんよりストラヴィンスキー“火の鳥(Firebird)”〈C〉。緊張感漲った、スリリングな演奏です。かっこいいなぁ……。

三「ソニーに買収される前のCBSの作品かな。レコーディング良いと思うよ」

中「そうですね、自分の家で聴いてもゾクゾクする感じがあって。でも、CDよりもレコードの方がゾクゾクするような引き込まれる感じがあるんじゃないかという気がするので、状態の良いアナログレコードで聴いてみたいですね」

迎「(キララさんに)むっちゃ良かったわー。音楽って良いなと思ったわ」

いやほんとに(笑)。それにしてもこのスピーカー、良い音しますね。

三「このスピーカーは4インチなんだけど、4インチのメリットというのは、口径が大きいとコーン紙は分割振動(外側と中側と真ん中が別々に振動)するわけね。それが人間の耳には気持ち悪いんですよ。小さいスピーカーだと口径が少ない分だけ分割振動が無くてコーン紙全体が一緒に動く」

なるほど。物理的な影響が大きいんですね。

三「スピーカーはこういうフルレンジ(低域から高域までユニット一つで出すスピーカー)のものが理想。低域、中域、高域で分けたり、複雑なことをやればやるほど音に濁りが出てくる。本当はこういうフルレンジ一発が良くて、もうちょっと低域が欲しければもう少し口径の大きいもの。ところがさっき言ったように、大きくしていくと分割振動が起きる可能性があるんで、スピーカーを買う時は、できるだけ分割振動が無くて、フルレンジで比較的心地良い、というものを探すのが、自分で“いい音”を作るためには役立つんじゃないかな。“デカいスピーカーが良い”っていうわけじゃないのね」

そういえば迎さんもフルレンジのスピーカーで密閉式でしたよね。

迎「はい、16センチのユニット一発で」

三「その方がいいんだよ。本来、スピーカーの箱は、密閉式の方が良い。これ(MSM-1)はバスレフの穴が空いてるんだけど、一見低域がより出るから良さそうに思うよね。ところが、そういうことをすると低い方から高い方までの音が一緒に出る方が心地良い、という事と反して、ちょっと低音が遅れる。その代わり、密閉式で低域を出すのは難しい。アンプも、パワーがちょっと余分にないといけなくなる。でも、密閉式のスピーカーの方が、音は絶対心地良いです。これも、穴をもうちょっと大きくすれば低域がもっと出てくるんだけど、そういう(低音が遅れる)弊害がますます大きくなってくる」

中「音がぼやけてしまうんですかね」

三「そうだね。なんとなく、ぼーっ、としたような感じの。カチッと締まった感じが無くなってくる」

迎「スピーカーの箱の大きさは……?」

三「大きい方が音は作りやすいです。これも、こんな小さな箱に入れずに、大きい箱に入れた方がよりいい音が、ずっといい音がする」

迎「じゃあ、このスピーカーはなんでこの大きさなんですか?」

三「このスピーカーはニックネームが“盆栽”で、小さくても幹は太くて根は張ってるよ、というイメージなんです。小型でもこれだけの音が出るよ、という事でびっくりさせてやろうという狙いがあったから、これだけ小さい箱に入れたんだ」

ええ、確かにびっくりしました(笑)。

三「それからもうひとつ、家で自分の好みの音にチューニングするには、スピーカーの下にインシュレーターを置くのと置かないとではすごく違う。素材や形に色んなものがあるけど、中には円錐形の尖ったやつがあるよね。あれは、音が籠ってる場合には効くんだけど、どちらかと言えば低域を豊かに出したい、という場合はやめておいた方がいい」

キララさんも、インシュレーターは使ってらっしゃいますよね。

中「ええ、100円ショップで買った、木とか安い素材を色々組み合わせてやってます」

三「シリカゲルがね、あれは物質としては非常に多孔性の物質なんで、振動を早くスピーカーの下に逃すためには非常に良いらしいんです。音が前に出てくる。ステージに近くなるような感じが出てくる」

……というわけで、三浦社長お勧めのシリカゲルで作るインシュレーターはこんな感じ
ガーゼの穴にシリカゲルの粒をはめていくそうです。こういう風に六角形にするのが音には良いんだとか。これで、スピーカーの下に敷けばOK。

閑話休題。視聴会の続きを。

迎さんお持ちのSLY STONE「There's a Riot Goin' On」〈ア〉より“Luv N' Haight”。
各楽器が、キンキン言いながら散らばって鳴っているような音で、正直、耳が痛かった……。

迎「鮮やかっていうか、細かいところまで聴こえちゃうから……きつかったっすね、これ(スライストーン)。聴けないですね」

家だと、そこまで出てこないから聴いていても気にならなかった……?

迎「気にならなかったですね」

なるほど、そういうケースもあるんですね。

さて続いてはキララさんの、ゆらゆら帝国「空洞です」〈ア〉より表題曲を。

中「気持ちいい感じで(笑)良かったです。ベースが前の方にガッとくる感じがありますよね。ハイハットもチッ、チッ、と気持ちいい、自然な感じで」

迎「バスドラの鮮やかさとか、初めてああいう風に聴こえましたね」

家で聴くのとはかなり違いましたか?

中「そうですね、フォノイコライザからカートリッジまで全然違うんで」

三「この針(PC-1)は、他のアンプと比べても一番高いの。アメリカで10,000ドルで売ってる。だから、普通だったらピックアップ出来てない音を拾ってると思う。だから、家で聴くのと比べると“あ、こんな音入ってたのか”という鳴り方してたんじゃないかな」

次に迎さんが手にしたのは、ジョン・コルトレーン「A Love Supreme」〈C〉

迎「これ、有名じゃないですか。でも、いい録音だとはあんまり思った事がなくて。ベースとか、あんま聴こえないなぁと思ってて(笑)」

僕も同感です。では聴いてみましょう。“Part 2 - Resolution”。
改めてこれだけのシステムで聴くと……エルヴィン・ジョーンズのドラムがすごいなぁ……。

迎「これだけ締まった感じですっきりした音で出てきたらベースの音も聴こえてきて、すごく良いプレイしてるな、と思いましたね。でも、もうちょっとなんとか……(笑)」

ですね。やっぱり録音は今いち。

中「でもさすがにサックスの音は、生々しく響いてましたね」

うーん、音の評価が難しいですね。三浦社長はいかがでした?

三「コルトレーン?いや、いいと思うよ。でも、大体コルトレーンの音楽そのものが一番難しいから」

確かに(笑)。

さて、ここでガラッと雰囲気を変えて、キララさんが中古レコード屋で購入されたという高田恭子「みんな夢の中」〈ア〉を聴いていただきました。アダプターもご持参。助かります!
69年の録音ですが、キララさんが「恐ろしいレコード」と例えていた(笑)のがよく分かる、素晴らしい音でした。

三「昔の録音だから、ちょっとハイ上がりの録音だね。多分その頃スピーカーも高域が出ないから、ちょっとハイを上げて録ってるんだろうね。だから今のいいカートリッジで聴くと、ちょっとハイがきつく聴こえる」

中「空間がスピーカーの外まで広がって聴こえて、すごく良かったです」

三「シンプルに2マイクでピシッと録ってる音の出方だね」

ここで、歌謡曲つながりということで、お馴染み五輪真弓「恋人よ」〈ア〉より表題曲を聴きながら、録音の話へ。

三「誰かに一度実験してもらいたいなぁと思うのが、今は指向性のあるマイクが殆どなんだけど、無指向性のマイクを使って、それも少ない本数でデジタル録音したら、どれぐらいアナログの音に近づけられるのか、聴かせてもらいたいんだけどね。今の技術で、そんなにアナログに追いつかないなんてことはないんじゃないかと思う。もうちょっと良くなっていいはずなんだよ」

おもむろに三浦社長が取り出したのは、テストプレスを頂いたというナット・キング・コール1950年代録音の再発LP〈ア〉。聴いていただいたのは、パーカッションをバックに独唱する曲、そしてストリングスをバックにした定番曲“Mona Lisa”。どちらも、歌声からわくわくするようなスイング感がほとばしるような生き生きとした録音です。これが60年前?!

三「音のレンジは明らかに狭い。ただ、テープの保管状態も良かったし、今聴いても結構楽しめる音が入ってる。CDとはちょっと違う感じの音が出せる、というので多分企画してるんじゃないかな」

迎「かなり良かったですね。太鼓の音も、指で触ってる感覚が伝わってきましたね」

確かにこういうものを聴いてしまうと、今何故これだけの音が詰まったデジタル録音が無いのか、三浦社長でなくても不思議に思わざるを得ませんね。

さて、すっかり時間が過ぎてしまいました。最後にキララさんからは矢野顕子「akiko」〈C〉より“しまった”、迎さんからはDODDODO「ど」〈C〉(新作!)より“太陽公園 ”をかけさせていただき、視聴会は終了しました。前者はドラムが引っ込んでギターが変に前に来てるようなアンバランスな音、後者はまだプレス前なのでCD-Rだったために、再生しなかったり音が途切れたりで最後までは聴けず終い。残念……。

キララさん、迎さん、今日はいかがでしたか?

中「自分が今持ってる機材でも、工夫次第で色々やってみようかな、と。どうしたいのか、というのも自分でも見えてきたので。今日はハイエンドな機器で聴くことが出来てとても楽しかったです」

迎「次の録音に向けて、色々ああしよう、こうしよう、みたいなことを考えることが出来て、すごく面白かったです」

三「さっき、このカートリッジは高いって言ったけど、元になる音源が本当の音の入り口ですからね。それを機械でピックアップしてアンプで再生してスピーカーから流してるわけですから、一番元になるのはミュージックソフトなんで、“絶対に良いもの”が欲しいんだよね」

迎「そうですよね、こういうシステムで聴いたら、いい録音しないとバレますよね(笑)」

次のペンペンズのリリース、期待してます!

というわけで、第九回の視聴会も無事終了。視聴会で初めてクラシックのレコードがかかったり、オーディオの専門的な話も聞けたり、僕にとってもすごく楽しい一日になりました。
キララさん、迎さん、見学に来てくださった皆さん、わざわざ来ていただきましてどうもありがとうございました!

当イベントは少し充電期間に入ります。次回がいつになるか分かりませんが、その間、別の企画も考えていたりもするので、そちらも近々発表できればと思っております。

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