neco眠る・森さん、BIOMANを迎えての第七回「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会」レポート
10月にCRJ-westの皆さんをお迎えして開催された第六回以来、二ヶ月ぶりに開催した今回の「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会」。
2010年を締めくくる回ということもあり、最後は盛り上がって来年を迎えたいな、という思いもあり、見学の方にもたくさんお越しいただこうと思っていました。
結果、ゲスト2名、見学者7名という、A&M視聴室のキャパ限界のお客さんが集まってくださり、今年ラストにふさわしい、楽しい視聴会にすることが出来ました。
さて、今回のゲストは、この視聴会が開催される前日(視聴会は12月18日に行われました)に、来年以降のライブ活動休止とメンバー脱退が発表されたneco眠るより、森雄大さん、BIOMANのお二方。
元々、当イベントについて知っていてくださっていた森さんに「じゃあ是非遊びにきてください」とお誘いして今回の視聴会が実現した、という経緯もあり、お二人とも沢山の音源を持って来てくださっていたので、今回は細かな説明などは省いて、それ等の音源を中心にどんどん聴いていただくことにしました。
(使用した音源について、CDは〈C〉、アナログ盤は〈ア〉と表記します)
ちなみに今回のシステムは、前回とほぼ同様のセットですが、スピーカーは久々のTANNOY Monitor Red、ターンテーブルは河口無線の視聴会でも使われていたA&Mのオリジナルターンテーブル・T01。
お二人の普段のオーディオ環境ですが、森さんは、普段パソコンに取り込んだ楽曲を内蔵スピーカーで再生するか、ポータブルのレコードプレーヤーにヘッドフォンをつないで聴く、というもの、BIOMANは、普通のミニコンポに、「捨ててあったのを拾った」というOTTO(三洋電機が昔オーディオブランドを持っていた頃のブランド名)のスピーカーをつないだもの、ということでした。
まず早速聴いていただいたのは、森さんより、ジャーマン・プログレの重鎮・ホルガー・シューカイ「Persian Love」〈ア〉。1979年の楽曲をリミックス・リメイクして今年リリースされたものだそうです。
森雄大さん(以下“森”)「生音がすごいですね。パーカッションと、あとギターも」
録音も素晴らしいですが、曲としても、すごくかっこいいですね。
森「うん、これ、すごくいい曲なんですよ」
続いては、BIOMANが普段のDJで使っているという音源の中から、ジャズ界の名パーカッショニスト・アイアート・モレイラ「IDENTITY」〈ア〉。75年録音。
しかしいざターンテーブルに置こうとすると、盤の僅かに穴が小さかったのか、ターンテーブルになかなか上手くはまりません。
森「そんなことあるんですか(笑)」
三浦(以下“三”)「いや、あることはあるんだ、そういうことは」
BIOMAN(以下“B”)「僕んちでは普通にいけてましたよ」
……これ、抜けなかったら、ターンテーブルごと持って帰ってもらわないと(笑)。
B「ラッキー(笑)……でも、これしか聴かれへん」
(一同笑)
森「DJでかけたい時も、あれごと持っていかな(笑)」
無事(?)なんとかターンテーブルにはまり、再生。
ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、アルフォンソ・ジョンソンといった面々も参加してのフュージョン作品ですが、なんの予備知識無しに聴いても演奏の息を飲むスリリングな展開は圧倒的で、録音も鮮明でダイナミック。
こちらは、普段DJでも……。
B「かけてます」
森「めっちゃいいなぁ」
B「家で聴くのと全然違いましたね」
DJブースでかけるのと、違いはあります?
B「うーん、結構ブースとかやったら……何やろな、とりあえず音デカイし(笑)」
森「しかも、(フロアで鳴ってる)メインの音で聴けるわけじゃなくて、モニターで聴いてるから」
B「これ、元々の音の感じがすごくバタバタしてて、色んな音がバサバサって重なってるんで、ブースとかで聴いたら、それがグチャグチャになって、わりと聴き取り辛いんですけど、今はすごく(聴きやすかった)、ピアノとか金物とかすごく綺麗ですよね」
聴き終わり、レコードをターンテーブルから持ち上げると、差し込んだ時とは違い、あっさりと抜けました。残念(笑)。
続いては森さんの方から。
ECDPOPOを、CDとアナログを両方持ってきていただいていたので、第四回でやってみた「同時に再生して聴き比べてみる」というのを久々にやってもらいました。
結果はというと……。
ほとんど区別つきませんね(笑)。
森「つかないっすね(笑)」
三「いい録音だと思うな。両方ともいい録音だと思う。(どのアーティストも)これぐらいの録音してくれるといいんだけどね」
森「うん、良かったです。すごく良いっすね、やっぱり」
アナログの良さもそうですが、CDにも十分ポテンシャルがある、ということが良く分かる比較だったと思います。
続いてのBIOMANのセレクトは、
B「日本のポップスの音を聴いてみたいと思って」
ということで、奥田民生「29」〈C〉より“愛のために”。部屋の中が「懐かしいっ」という空気で満たされます(笑)。
森「僕、初めて買ったCDが奥田民生の「29」。テレビで“息子”を演奏してるの見て」
僕はユニコーンの「ヒゲとボイン」でした……ってそんな事はどうでも良くて(笑)。
さて、「29」ですが……やはりというか、メジャーレーベル録音らしい、音が中央にこぢんまりと集まったような感じの音でした。
三「これはやっぱり、さっきのと比べるとレコーディングレベルが大分違うね」
BIOMANはどうでした?
B「(視聴室のシステムだと)聴きやすいですね」
森「なんか、(こういうシステムで聴くと)同じ部屋で鳴ってるのかどうかがすごく分かりやすいですね。ちゃんと、オーバーダブとか、ギターの位置とか、一個の部屋でごっちゃになってるのかなってないのかがすごく分かりやすいというか。さっきのアイアート・モレイラとかは、(部屋の)全体で鳴ってる感じがして、すごく良かったです。(音が)整理されすぎてるかどうかとか、そういうのもすごく分かりやすいですね」
どんどん聴いていただきましょう。次に森さんが選ばれたのは、ルイス・アルベルト・スピネッタという、アルゼンチンでは大変に人気のミュージシャンらしいですが、不勉強な為、全く存じ上げませんでした。
音は、浮遊感のある音の加工が不思議なムードを醸し出していましたが、森さん、いかがですか?
森「ちょっとこの曲、ドラムがすごく変な感じで入ってて、元の音を消してリバーブだけ出してるんか……ちょっと、あんま分かりにくかったかもしれないですね(笑)」
さて、BIOMANからは前出しましたエグベルト・ジスモンチ「Carmo」。
77年の録音ということですが、鳴った瞬間に空間の広がりがものすごくリアルで、楽器同士の距離感も立体的に脳内に浮かび上がり、アンサンブルが視聴室に出現したかのような生々しさ。演奏もすごい!
B「ジスモンチって結構、生々しい録音が多いんですけど。バチバチ鳴ってるような」
森「金物とかパーカッションがいいね」
B「うん、アタックとかすごくよく聴こえる」
さてここで森さんが少し遠慮がちに出されたのが、森さんが今年立ち上げた自主レーベル「こんがりおんがく」の第一作、オシリペンペンズ「NEW ME」〈C〉。やっぱり今回、これは絶対外せないですよね。
聴いてみると、ポータブルプレーヤーなどで聴くよりも、楽器の音も歌もはっきりと伝わってきて、歌詞の意味も明確になり、思わず笑いそうになりました(笑)。
しかし三浦社長からは厳しいお言葉。
三「これ、実際のドラムはどれぐらいの位置にあるの?えらいドラムが遠くに……隣の部屋に置いてあるような感じに聴こえる」
森「そうっすね(笑)」
三「これあんまり、録音良くないね。なんかもうちょっと(前に)出てくると、リアル感があるんだけど、隣の部屋でドラム叩いて、こっちで歌ってる、っていう感じ」
森「なるほど……しかも、ジスモンチとか聴いた後やから(笑)すごく差が分かりますね」
三「これはやっぱり、ミュージシャンがレコーディングエンジニアに注文つけないと。多分、自分が演奏してる時は、そういう音の鳴り方してないと思うわけね。でも、出てきてる音がこうだと、やっぱり生で歌ってる、っていう音が出てきてほしいと思う」
森「そうですね、演奏はいいんですけど……でも、こういう、ちゃんとしたいいオーディオで聴くと(録音の状態が)分かりますね」
ここで三浦社長から、いつも話されている、手法が簡便になることでイージーなレコーディングが増えてしまっている、というデジタル録音の功罪についての話が少しありました。
森「……あとでモタコくんに電話しよ(笑)」
“これは絶対外せない”つながり、というわけではないですが、そろそろneco眠るの音源を……。
森「いや、それはまあ……いいんじゃないですか(笑)」
三「いや、それ聴かせてもらおう」
ええ、勿論!
ご本人が音源を持って来られてなかったんですが、僕が持ってきてました。聴かずに帰っていただくわけにはいきません(笑)。
というわけで、当視聴会お馴染み・neco眠る「Even Kick Soysauce」
〈C〉より“猫がニャ〜て、犬がワンッ!”
これまた先ほどとは反対に、ペンペンズの後だと、より音の違いが明確ですね。
三「ドラムの音でも、こういう風に他の楽器の音と一緒に“だんっ”と出てくると、非常に気持ちがいいね」
森「そうっすね……わりと……いい音で(笑)」
三「いや、いい音ですよ。例えばそこの細長いスピーカー(前回、前々回使用していたGamuT Superiores S5)でも、下の二つは低い方の音を出して、上のユニットは高い方の音を出してる。そうすると、高い方の音の方が、早く人間の耳に届くわけですよね。それが同時に届くっていうのが一番自然な形で人間は捉えてるんで、わざとテーパーをつけて、高域を若干後ろにつけることによって、人間の耳に同時に届くように設計されてるわけです。こっち(TANNOY Monitor Red)も、中のユニットは、大きなユニットの真ん中にツイーターが入ってるわけ。従って、一個のユニットの中で二つのユニットがあるわけだけれども、高域が遅く届くように設計されている」
正にそんな、全ての音が一体感を伴ってスピーカーから出てくるような録音ですね。
森「あんま……というか、全く、自分たちの曲を家で聴かないんで、録ってる時とかミックスしてる時とかずっと聴いてて、“もうええわ”って(笑)。久しぶりに聴きました」
三「いい音で録れてますよ、これは」
B「ドラムが家で聴くのと全然違いましたね。最初の一発目の音とか」
スタジオで録音してる時に聴いている音と比べるとどうですか?
森「うん、わりとそれに近い。録ってる時とか、ミックスしてる時の感じに近いですね。生々しいというか。いやー、良かったです」
続いては森さんの方から、
森「ダンス・ミュージックかけてもいいですか?」
というわけで、シャックルトン「Man On A String Part 1 & 2」〈ア〉を。ごく最近のリリース作品ですね。
まさにフロアど真ん中のダンス・チューンですが、ピュアオーディオのシステムで聴いても素晴らしい音で響いていました。パーカッションの音は、スピーカーから飛び出して、目の前に楽器が並んでいるかのような立体感。
三「うん、いい録音だね」
森「すごくいい音っすね」
フロア対応の録音ですけど、こういうシステムでかけると、すごくクリアに鳴りますね。
森「うん、めっちゃ聴ける。別にメロディあるわけでもないのに、音だけで聴けるという……最新のダンスミュージックを最前線でやってるような人なんですけど、すごいですね」
ダンスチューンが続きます。BIOMANのセレクトは、ルチアーノ「TRIBUTE TO THE SUN」〈ア〉。
視聴室がクラブのフロアに一変するようなミニマルなダンスビートでしたが、話題は何とも言いがたいジャケ写に集中(笑)。
森「これ、ジャケすごいな(笑)」
B「何不自由無く暮らしてそうな感じ(笑)」
次に森さんがセレクトされた「Shangaan Electro - New Wave Dance Music From South Africa」〈ア〉という、南アフリカのニューウェーブのコンピレーションを聴いていただいて、この辺りで三浦社長の方から、ハリー・ベラフォンテ〈ア〉(今回も“Matilda”でしたが、かなり短めに聴いていただきました)、ノラ・ジョーンズ〈ア〉と、視聴会での常連曲をプレイ。
三「他には、どんなものを聴いてみたいですか?」
森「スタジオ録音で、何か面白い録音のものとかありますか?」
ということで三浦社長が手にしたのは、第二回以来久々に登場した、イーグルスの「Hotel California」。
ここで、森さんの方から、今のオーディオ業界の“旬の話題”とも言える、DSD録音についての興味深いお話が。
森「今年の夏に、岐阜の村国座っていう歌舞伎の舞台で演奏した時に、DSDレコーダーでエアーで録ったんですけど、それが(音が)良かったんです。ヘッドホンで聴いただけなんですけど、それをここで鳴らしたら、すごく良さそう。初めてそれでDSDの音って聴いたんですけど、やっぱりほんまに良くって」
音源は商品化されるんですか?
森「いや、それはたまたまその時友達がPAに来てくれてて、で、その人がDSDレコーダー持ってて、それで偶然録ってくれたんですけど。で、こないだの東京でのライブも録ってくれてて、次の29日のも録るんで、それはもしかしたら何か出すかもしれないですけど」
最近、e-onkyo musicもDSD配信を開始し、再生の兆しが見えるDSDオーディオですが、もしかすると来年は、neco眠るのDSD配信が始まるかも……そうなると当視聴室にも、いよいよDACが必要ですね。
閑話休題。さて、イーグルスですが、いかがでした?
森「めっちゃ音良かった……」
こちらもお馴染み、手嶋葵〈C〉を聴いていただいて、再びゲストの方に持ってきていただいたソースをかけていきます。
「内田直之ワークスを聴いてみたい」という森さんの方からFLYING RHYTHMSの作品〈C〉を選んでいただきましたが、聴いてみてびっくり。まるでアナログレコードを聴いているような生々しくリアルな質感。す、すごいなぁ、これ……。
三「なかなかいい録音だねぇ」
森「ペンペンズを内田直之に録ってもらいたいんですよ。ドラムの音がすごくいいんで。いいですねぇ、めっちゃ」
なるほど!もし実現したら、ペンペンズの次作は、さらに要注目作になりそうですね。
続いては、BIOMANより、Robert Fripp & The League of Crafty Guitarists「Live」〈C〉。
三「これはもう、典型的な現代のデジタルレコーディングだね」
B「そうなんですか?」
三「個々の楽器の音を良く録ろうとしてるけど、肝心のミュージックステージというか、音楽的なものが無くて、楽器を正確に入れようとか、そういうのばかりが前に出て来ているように思えてしょうがない。多分、実際に生で聴いたら、もっとミュージカルな音がするんじゃないかな」
続いては森さんより、二階堂和美「ニカセトラ」〈ア〉の冒頭を飾る“蘇州夜曲”。楽曲ごとに色んな環境で録音されているアルバムですが、この曲は河原で録音したもので、川のせせらぎが後ろで聴こえています。
三「なかなか面白い」
森「これ、本当に河原で録ってるんです」
三「この河原の音が非常にノスタルジックな感じで、歌も蘇州夜曲なんて古い歌だからね。だから、企画としたらなかなか面白い」
森「うん、すごく良かった」
次はBIOMANから、ボイスパフォーマーのメレディス・モンク「DOLMEN MUSIC」〈ア〉。
三「録音は非常に良いと思うよ。綺麗にバランスもとれた、アナログらしい、いい録音だね」
BIOMANはいかがでしたか?
B「うーん、あんまりよくわからなかったですね(笑)。もっと声がどんな風に変わるかな、と思ってたんですけど、結構……(変わらなかった)」
どんな環境でも、結構ちゃんと鳴るような録音なのかもしれないですね。僕もいい音だったと思いました。
「彼(BIOMAN)のお兄ちゃんのレコードを(笑)」と森さんが出してくれたのは、今年話題の一作・オオルタイチ「Futurelina : 燃えるひみつ feat キセル」〈ア〉。
以前にもオオルタイチはかけたことがありますが、遥かに素晴らしい録音でした。曲もものすごく良いですねぇ。
B「(家で聴くのと)全然違う」
森「違うなぁ」
三「これは非常にいい録音」
B「すごくビートが、家のスピーカーで聴くよりズシズシ来てましたね」
三「躍動感があるね」
さて、もうこの時点でかなり予定時間をオーバーしてしまいました。もし皆さん、時間が許すのであれば、もう少し続けてみようかと思いますが、どうですか?大丈夫ですか?……はい、じゃあ、あとちょっと。
三浦社長から、常連「STAR DUST」〈ア〉を短めに聴いていただき、森さんからバートン・クレーン「バートン・クレーン作品集~今甦るコミック・ソングの元祖~」〈C〉、BIOMANからレイモンド・スコット「Soothing Sounds For Baby」〈C〉、と、かなり古い録音のものを続けて聴いていただきました。バートン・クレーンは素っ頓狂な日本語が面白かったですね。レイモンド・スコットも、昔懐かしいテレビの挿入曲のような音がとてもユニークでした。
次に森さんがセレクトしたのは、テニスコーツ「バイババビンバ」。
僕は、同曲の別バージョンを収録した「タンタンテラピー」がとてもいい録音だと思っていたので、いつか視聴会でも聴いてみたかったんですが、このシングルも素晴らしい音です。
三「バランスの取れたいい録音だね」
森「そうですね。すごく良かったです」
「DODDODOの声がすごく良く聴こえると思うんで、どんな風に鳴るのか聴いてみたい」ということでBIOMANが次に出してくれたのは、DODDODO+稲田誠のアルバムより“手をつなごう”。
B「良いですね」
前回、BRAZILをかけましたが、音の感じは、同じくスタジオの空気感が再現されたような感じでしたね。
森「稲田さんのカセット録音も聴いてみたかったんですよ。PAAPをDOMMUNEでかけた時、ほんまに音良かったから。DOMMUNEもめちゃめちゃシステム良くて」
ですよね。USTREAMで聴くDOMMUNEの音も良いですしね。
さてさて……予定時間を1時間近くオーバーしてしまいました。このままだと終電まで続きかねないので(笑)、最後に森さんの方から一曲、お願いします。
「クラシックっぽい曲って普段あんまり聴かないから、何聴いてもなんとなく良く聴こえてしまうんで」ということで聴いてみたかったという、Sun City Girls「Mister Lonely」より表題曲を。
この日のイベントの、そして今年の締めくくりに相応しい、壮大で穏やかなナンバーでした。
それでは最後に、本日の感想をお願いできますか?
森「普段、ヘッドフォンとか、パソコン内蔵のスピーカーとかで聴いてるだけでは発見出来ない、曲のアイデアとか……録音の仕方のアイデアというよりは、曲のアレンジとか、その人の意図が発見出来るというか。自分の曲を聴いた時も、録音した時のこととかすごく思い出して、ああなるほど、と思って」
第三回に来ていただいたイルリメさんも、録音してた時のしんどいのを思い出した、って仰ってましたね。
森「かなり思い出してましたね(笑)。自分でも忘れてるぐらいやから、他の人がいろんな思いを込めて作った細かいアレンジとかも、(聴き手に)届いてないことはあるんやろうなぁ、と思いましたね、そういう、安いステレオとか、悪い環境では」
B「いつもクラブとかでフロアに行った時の“いい音”って言ったら、どれだけローが出て、ハイが出て、キックがよく聞こえてとか、そういう感じなんですけど、(ここのシステムだと)作ってる人の意図がどれだけ伝わるか、っていうことに基準を置いてるようなシステムだと思うんです。それで聴くと、やっぱり新鮮ですね。DJやってる時のハコの音とは全然違う。悪い(録音の)レコードとかでもよく聴こえるのではなくて、悪いんやったら、ここだと多分より悪く聴こえると思うんです。やってる人のやりたいことが、ほんまに分かるような感じで」
森「みんなそれぞれ同じ音楽を聴いても、メロディを中心に聴く人もいれば、リズムに注目して聴く人とか、人それぞれやと思うんですけど、こういうシステムで聴くと、それがすごく平等になって聴こえて、メロディとリズムの絡みとか、そういう部分がすごくよく見えて、面白かったですね。発見がすごくありました」
B「最初、このスピーカーの音に注目して、どれだけ音がいいかにわりと意識を向けて聴いてたんですけど、ずっと聴いてたらやっぱり聴いてる曲がどうなってるか、っていう方にだんだん意識が行ってて、そういう風に意識が行くのは、やっぱりいいシステムやからなんやろうな、と思いましたけど」
森「僕これ(ホテルカリフォルニア)の音の良さにびっくりしました(笑)。こんなにいい音やったんやって。テレビとかで流れてるのとかでしか聴いたことが無かったんで。ドラムの音とか、すごく良かった。全部良かったけど、すごくいい音でしたね。技術は進歩しても、実際に録れてる音自体はむしろ駄目になっていってるっていうのが聴いててすごく良く分かりましたね」
録音してるものに込めたこだわりが、聴き手に伝わり切らないというところは、あんまり意識することは無かったですか。
森「いや、録ってる時から、まあ、録ってる時はラージスピーカーで録ったものをチェックしてるんですけど、もちろんそのまま届くとは思ってなくて、だからラジカセとかiPhoneにミックスしたものを入れてチェックするんですけど、うん、まあ、そこはもうしょうがないなぁ、と思ってるんで。
1枚目の時は、わりとスタジオのラージスピーカーだけで音を作ったので、iPodとかで聴くと駄目なんかなぁ、と思って。その反省も踏まえて(笑)、2枚目は、わりとどの環境でも同じように聴こえるものにしようとは思いました。多分、マスタリングの人の違いとかもあるとは思うんですけど」
見学に来ていただいた皆さんにも方にも感想をお伺いしましたが、
「演奏している姿が目に浮かぶようで、すごく感動しました」
「最初はどう聴けばいいのか分からなかったけど、“これはいい録音だ”というような話を聞きながら聴いてるうちにだんだん入り込んでいって、楽しい時間が過ごせました」
「いつも聴いているものでも、こんなに違って聴こえるんだなぁ、と。発信する側の思いを伝える為にも、もっと多くの人が、これぐらいの環境で聴けるようになるといいなぁ、と思いました」
「音楽の聴き方が、今までとは違う、こういう聴き方があるんだ、というのが分かって、自分の音楽の聴き方も広がっていくような感じがして、とてもいい機会でした」
「普段音楽を聴いてて、曲の良さとかは分かるんですけど、音自体が持ってるような良さっていうのも、やっぱり当然あるんだなぁ、というのを改めて思いました」
と、とても嬉しいお言葉を沢山いただけました。
視聴会開始当初は、こちらの思いや意図が伝わるのかどうか毎回不安で、今でも実際に聴いていただいて、感想をお聞きするまではやっぱり不安なんですが、こういったお言葉を頂けると、「伝わった!」という実感が沸いてきて、もの凄く嬉しいですし、今後の大きな励みになります。というか、その言葉無しには、この企画は続けられません。
「いつまでも聴いていたい」というお言葉も何度か頂きました。
一方で、「でも、こんなシステムは自分には絶対買えないし……」も、毎回のように頂いています。
勿論、こんな何百万といったシステムは、自分も含め、宝くじにでも当たらない限り、絶対に無理です。しかし、“いい音”を聴くために、そんな大仰なシステムが絶対必要なわけではありません。
“いい音”に少しでも興味を持っていただいた皆さんは、「アサヒステレオセンターに“オーディオの買い方” を訊いてきました」を一度読んでみてください。安い、とまではいきませんが、限られたお小遣いの中で“いい音”を手に入れる手段はある、ということが分かっていただけるのではないかと思います。
これにて、今年のピュアオーディオ視聴会は終了です。
来年からは隔月での開催を予定していますが、今年以上に、興味を持っていただけた方がたくさん来ていただけるような体制にしていきたいと思っておりますので、「行ってみたい!」「聴いてみたい!」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
というわけで、ゲストの皆さん、見学の皆さん、本当にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております!
<neco眠る:今後の予定>
■2010年12月29日(金)
「TOKYO No.1 SOUL SET presents 全て光」
場所:恵比寿LIQUID ROOM
共演:TOKYO No.1 SOUL SET、曽我部恵一BAND、原田郁子(クラムボン)、七尾旅人、AFRA
※現メンバーでのラストライブです。東京近郊の方は是非!
Even Kick Soysauce | |
neco眠る 二階堂和美
スリーディーシステム 2009-07-08 |
いい音を楽しむオーディオBOOK (SEIBIDO MOOK) | |
上田 高志
成美堂出版 2011-12-02 |